働くって何だろう? 日本の「働き方と学び方」を考える①

◆新卒一括採用という雇用慣行が引き起こすもの

我が国の働いている人の数(就業者数)は約6376万人、そのうち雇用されている人は約5640万人。たいていの人は、高校か大学を卒業してすぐに4月からどこかの会社に入り働き始める。

これが、日本的雇用慣行の一つである「新卒一括採用」である。

日本以外では、ほとんどない採用手法である。

 

アメリカやヨーロッパ諸国では、従業員の採用は欠員が出た時に、あるいは新たに人員が必要な職務が発生した時に、その必要に応じて、その職務を担当できるスキルを持った人を採用するということが一般的であり、新卒一括採用という仕組みは基本的に存在しない。

新卒一括採用という仕組みのおかげで、大学ではあまり勉強しなくてもなんとかどこかの会社に入り込める社会であると同時に、ここで落ちこぼれると這い上がるのが難しい社会でもある。

 

私が大学を卒業して就職したのは1983年であり、完全失業率は2.66%と完全なる売り手市場であった。

「誰もが、それほど頑張らなくてもそこそこの会社になんとか就職できる」、という幸せな時代だった。

そして、就職してしまえば、これも日本的雇用慣行である「終身雇用」により、60歳の定年まで雇用が保証され、若い時は賃金が安いけど、これまた日本的雇用慣行である「年功序列賃金」で毎年確実に年収が上がると、無邪気に信じている時代だった。

若い頃は、残業が多くこき使われるけれど、普通にやっていればクビになることはなく、30歳、40歳になれば管理職になって、仕事は比較的楽になり、そこそこの給料がもらえる・・・と、訳もなく信じていた。

そういう時代だったように思う。

 

しかし、1991年に始まるいわゆる「バブル崩壊」の後、景気は下降局面を迎え、1997年には北海道拓殖銀行山一證券と大手金融機関の経営破たんが相次ぎ、1998年には長銀が経営破たんした。

今までは、絶対につぶれないと思われていた大手企業の相次ぐ経営破たんで、「これは、僕らも安心できないな」という気分が一気に高まった。

 

そして、1998年の完全失業率は4.10%に上昇し、2002年には5.3%倍に達した。

この時代に、不幸にも新卒として就職活動を行った世代が「就職氷河期世代」である。

私が就職した時代には、「そこそこの会社に入れていた」人が、いくら頑張っても「どこにも就職できない」という事態が発生したのである。

 

そして、就職できなかった多くの人が、「非正規社員」として働くことを余儀なくされ、彼らが現在の社会問題となっている「高齢フリーター」を形成している。35歳から44歳の高齢フリーターは50万人を突破している。

この原因を、「学生時代には勉強もしないで遊びとバイトに明け暮れていたことの付けが回ってきているのであり、自業自得だ」などという人もいるが、そうだろうか?「学生時代には勉強もしないで遊びとバイトに明け暮れていた」のは、私の世代でも同じようなものだろう。景気の循環に対応した雇用政策が打てなかった政治にも責任の一端があるのではないだろうか?

 

不景気による「就職氷河期」という外的要因でフリーターになってしまった人たちが、2006年以降の緩やかな景気回復局面や東北大震災後の景気回復局面の中でも、なぜ安定した職業に就くことができなかったのか、その根本的原因を探って、対策を打つことが重要になるだろう。

 

その根本原因として、新卒一括採用に代表される硬直的な「働き方と学び方」の考え方が日本社会には根強く残っていることがあるのではないだろうか。

 

さて、皆さんは新卒一括採用について、どうお考えですか?